介護職は、排泄や入浴の介助といった身体介護の肉体的負担が大きいうえ給与も低く、離職者が絶えない状態が続いていました。現場の介護従事者に対する需要は高く、売り手市場の状況が常態化していたと言えるでしょう。高齢化社会の到来とともに、介護職の慢性的人手不足を解消することが、喫緊の課題となっています。そこで、働き方改革の一環として、介護職員の待遇改善にも力が注がれるようになりました。処遇改善加算制度が施行され、現場の介護従事者への一時金支給が可能になりました。さらに、全産業の平均年収に近づけるため、一定期間の実務経験を積んだ介護福祉士等に対して給与の補助を行う介護職員特定処遇改善加算制度も導入されています。

もっとも、処遇改善加算制度は、介護事業所の責任者が規模や職員構成など個々の事情に応じて必要な申請をすることが前提であり、当初は煩雑な行政手続きを踏んで正式に申請する事業所がさほど多くありませんでした。というのも、処遇改善加算は現場職員のみが対象であって、申請する責任者本人は受け取れないからです。

また、離職率の高い介護現場では、指定の期間の実務経験を積んだ介護福祉士が少なく、実際に給与の増加を見込める現役職員の数は少ない状況でした。一方で、指定期間の勤務経験を積んで特定処遇改善加算の対象者となるために離職を思いとどまる介護福祉士も少なくありません。さらに、人材確保のため処遇改善加算の申請をする事業所も徐々に増えて、全体の9割を超えるようになりました。こうした状況の変化を見て、介護の有資格者が介護職に復職するという期待も高まっています。